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シュモクザメの不思議
昨日、深夜に知り合いの大学講師のところにアルガルベの観光関連企業の方から「シュモクザメについてコメントしてもらいたい」という依頼があったそうです。けっこう食べて飲んでそろそろ寝るかの時だったので、ちょっとイヤな気になったそうですが、大好きな「テレビの取材」と聞き、応じたそうです。下の写真が今日の昼に放映された時のシーンです。はっきり言って、酔っぱらっていました。
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実はコメント依頼のあった数時間前にアルガルベの海でイワシ漁をしていた巻き網船が多数のシュモクザメの群れを発見し、そのうち数尾が網にかかり、港で水揚げされたという情報がありました。これは普段は"見られない"光景であるため、地元漁師もあわてたのでしょう。それを聞きつけた観光関連企業の方が、「引き続き海の安全をアピール」したく、大学講師に相談した、といったところが真相のようです。そりゃ、そうですね。海にサメが出現して、観光客が大挙して逃げ出して行ってしまったら、観光業は大打撃を被ります。
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新聞にも「心配する必要はなし」といった内容の記事が掲載されました。

学名 Sphyrna zygaena、 英名 Smooth hammerhead、 ポルトガル名 Tubarão martelo、 和名 シロシュモクザメ です。

しかし、今回の本題はこんなことではありません。
定置網には毎年必ず、特に夏に多くシュモクザメが入網します。しかし、です。定置網に入った個体に限らず、今までOlhãoの市場に水揚げされたシュモクザメはすべて雌(♀)のみなのです。ですからオス(♂)は見たことがありません。正確にカウントしてはいませんが、これまでに少なくとも100個体以上は見てきたと思います。で、先のニュースにも水揚げされたシュモクザメのシーンがあったので雌雄を確認したところ、やはり雌でした。
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サメの場合、体外に交接器(クラスパー)がありますので、容易に雌雄の判別ができます。もっとも交接器があっても雌の場合があるそうですが、今回は逆のパターンを考えなければならないかもしれません。

2007年5月のThe New York Times(ニューヨークタイムズ紙)に"Female Shark Reproduced Without Male DNA, Scientists Say" という記事があります。「雌サメが、雄サメのDNAを持たない子サメを出産」、ようするに、雌サメの卵子のみで、雄サメの精子と受精することなく、子サメが生まれたということです。これがシュモクザメです。この生殖様式は「単為生殖」と呼ばれています。一般的にシュモクザメは胎盤を形成する胎生(viviparous)のサメと考えられていますが、「単為生殖」する場合もあるということなのでしょうか。「雄」は実在するのでしょうか。少なくともアルガルベ近辺では雄のシュモクザメはどこにいるのでしょうか。それとも、いないのでしょうか。でも、なぜ。

そして、今日も1尾、定置網に入りました。やはり、「雌」の個体でした。
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「不思議」はまだ身近なところにもたくさんあるようです。







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by mobulamobular | 2010-08-29 18:05 | サメ・エイ
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