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ソウダガツオ - さぁ、どっち。
前々回のLa NiñaにあるNOAAの"Cold & Warm Water Episodes by Season"のデータ表から分かるように、1994年以降は6回のエルニーニョ現象(El Niño)らしき期間がありましたが(日本の気象庁では97年春~98年春、02年夏~02/03年冬、09年夏~10年春の3回となっています。)、アルガルべ定置網におけるソウダガツオの漁獲は、さほどエルニーニョ/ラニーニャ現象との直接的な関係はないようにも思われます。しかし、大漁を成すには8月・9月の平均水温が21℃以上になるのが望ましいことが過去のデータから明らかになっていますので、エルニーニョ/ラニーニャ現象のような地球規模の自然現象よりは、局所的な気象状況(海況)がより重要なファクターとなっていると思われます。
何れにせよ、今年の夏の猛暑はソウダガツオ漁にはプラス要因です。ラニーニャ現象が発生したようですが、もうしばらくここはアソレス高気圧に頑張ってもらって、「高水温」を維持してもらいたいと思っています。("アソレス"について余談ですが、通常日本では"アゾレス"と呼ばれています。これは英語読みのカタカナ表記によるものです。ポルトガル語では"Açores"となり、"アソレス"と発音します。ですからここでは常にポルトガル語読みのカタカナ表記にしています。)
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アルガルベ定置網ではマグロの漁期が終わった8月下旬から10月中旬ほどまでが、ソウダガツオ漁の盛期となります。おおよそ2ヶ月半の「短期決戦」です。この魚の行動パターンも過去の記録からおおよそのことが分かっています。夜明け前にこの魚はあまり動きません。ですから定置網にもあまり入りません。日が高くなるにつれて、行動が活発化し、ボンボン定置網の中に侵入してきます。ですから、定置網船は他に仕事がなければ、遅くに出港してもOKです。それからLota(市場)の閉まる夕方4時までが勝負です。2隻の定置網船がこの間何回市場と定置網を往復できるか、です。
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で、始まりました。出だし好調です。例年より1週間ほど早いスタートとなっています。
そして、見つけました。鰓蓋上部にある黒点が、頭から背にかけての黒色部と"離れている"個体です。
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単なる偶然、それとも個体差の範疇、はたまたヒタソウダ(Auxis thazard)なのか、です。
そして、体側面の胸甲(有鱗域)が第1背鰭後に急に狭まっています。
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"さぁ、どっち"。以下に引き続き勝手な考察を述べます。

ぱっと見はマルソウダのような気がします。しかし、よく見るとヒラソウダのように見えます。

正直、上から2番目の写真のような個体も多く含まれますので、スマ(Euthynnus alletteratus)との交雑種ではないかと思っています。ギリシャのHCMR (The Hellenic Centre for Marine Research)という研究所の2008年の調査では、北東地中海の海域で同じ時期にAuxis rocheiとEuthynnus alletteratusの卵および幼魚が採集されていますので、両者は同海域で同時期に産卵活動を行っているものと推測できますから、交雑種があっても不思議ではないと思うからです。しかし、すべての個体が、いつもではありません。地中海のような特殊な海域において、その年の天候や海況に左右され、長い年月の間、交雑種が誕生してしまった時がたびたびあったのではないかと考えます。

同じく2008年にFAO(国際連合食糧農業機関)のGeneral Fisheries Commission for the Mediterranean (GFCM)とICCATが発表した地中海内の小型マグロ類の合同調査書がありますが、そこでは1996年に行われた調査によって地中海内にはAuxis rochei rocheiという亜種の存在が指摘されたそうですが、サンプル個体が地中海内のみだったことなどからその信憑性が乏しく、また、新たな調査では大西洋側モロッコから地中海中央部においては1種類のソウダガツオしか発見されなかったことなどから、引き続き地中海内のソウダガツオはAuxis rocheiの1種類のみが存在することとする、となっています。また結論として、"In conclusion, the dismissal of the name Auxis thazard for Mediterranean fish is strongly supported." と書かれています。ようするに「地中海にはヒラソウダはいない」ということです。

しかし、「Auxis rocheiのみがいて、Auxis thazardはいない」というのは納得できるのですが、「マルソウダのみがいて、ヒラソウダはいない」となると納得できません。なぜならば「身」と「味」は、「日本のヒラソウダ」と同じだからです。

勝手な結論としては、アルガルベのソウダガツオ(Auxis rochei)は、「マルソウダとヒラソウダとスマを足して3で割ったような魚」ということにしておきます。

これじゃ、絶品間違いなし、ですね。








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by mobulamobular | 2010-08-24 08:01 |
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