「漁業大国ノルウェー」です。
アトランティック・サーモンやタラなどに代表されるノルウェーの魚種ですが、これもそのひとつです。あまりにも日本では有名になったのでちまたでは「ノルウェーサバ」とも呼ばれていますが、すでにこれを「マサバ」と思い込んでいる人も少なくありません。 ちなみに上の写真のものはアルガルベの定置網で獲れたものです。 昨年来のマグロの問題で各方面から「資源保護の観点からマグロ漁を止めろ」という声が盛大に上がる中、リスボン大学の先生から送られてきたメールに添付されたスウェーデンからのWeb記事です。 内容はノルウェーの食品研究所(Nofima)へのインタビューです。未来型漁業(fishing of the future)と銘打っています。まず最初に、オッと思ったことは"Capture-based aquaculture"(畜養=獲った天然魚を短期間養殖すること) という表記です。養殖業(aquaculture)を手法や目的に応じて呼び名を変えています。日本でも養殖、増殖、畜養とずいぶんと昔から養殖業をいくつかに分けて考えていますが、ポルトガルではそれらを分けることなく一括して養殖業(aquicultura)としています。そして「漁獲した魚をイケスの中にとっておいて、相場がよい時に売る」みたいなことが続いて書いてありますが、これはようするに「出荷調整をする」という意味です。その後は、「4月に天然のタラを100トン漁獲したら、12月には200トンのタラを売ることができる」とその有用性をうたっています。また、それは年間を通じて市場への安定供給を実現させる、とも述べています。そして最後は、「我々は天然資源を収穫しているのだから、漁業の持続性を維持するための漁獲リミットがある。もしもっと儲けたいのであれば、すでに獲った魚に付加価値をつけろ。自然を大切にしろ」みたいなことで締めくっています。天然資源の恩恵を思いっ切り受けているノルウェーならではの考え方ともいえます。 で、リスボン大学の先生は、「これはアルガルベの定置網が最初からやっていることで、何も新しかったり、未来のものとかではない。しかし、こういった考え方がヨーロッパにもっと広がれば、十把一からげで、マグロ漁を止めろ、なんてことは言わなくなる。」とコメントをいただきました。 さすが、漁業大国ノルウェー。さすが、ポルトガル水産界の第一人者であるリスボン大学の先生。と思いましたが、前述のとおり、日本ではこんなことはとうの昔から言われて続けていることなのです。さすが、「昔」漁業大国、Nippon。しかし、今では外から学ぶことが多くなっている様子です。 めったにこの手の雑誌は読まないのですが、ちょっと気になったので、日本から送ってもらいました。 「ノルウェーの水産業が元気な理由は、徹底した資源管理と漁獲枠の設定にある」そうです。また、別のところから聞いた話では、ノルウェーでは魚の最低価格が設定されているとのことです。これらにより、漁師の収入は安定します。船ごとに漁獲量が割り当てられますから、「我先に」と慌てて漁をする必要がありません。そして最低価格が保障されている訳ですから、じっくり魚を選んで漁獲できる訳です。この最低価格ですが、そんなに安いわけではないそうです。逆に言えば、その価格に見合った魚を漁師は水揚げしなければならないということです。それは鮮度だったり、品質だったり、サイズの問題だったりします。こうなると、小さな魚は漁獲しませんし、高品質の魚にするため、漁師はそれなりの努力をすることになります。とてもよい考えだと思います。ポルトガルでも同じようにやってくれないかな、とつい思ってしまいます。 漁師に対する所得保障制度はダメだとも言ってます。なぜならば、「それがネックとなり、水産業の企業化、効率化が進まない」とのことです。確かに、思い当たる節はあります。 (学名 Scomber scombrus、 英名 Altantic mackerel、 ポルトガル名 Sarda、 和名 タイセイヨウサバ) ノルウェーでは漁師の数を減らしたそうです。「努力しない漁師は排除された」とも考えられます。しかし、それゆえに漁師1人当たりの漁獲量は年々増え、今では年間約160トンという驚くべき数字を表したグラフがこの雑誌にありました。アルガルベ定置網の漁師1人当たりの漁獲量のざっと4倍です。 そして、ノルウェーの漁師は高収入を得ている訳です。また、漁獲枠のおかげで、「半年間はバカンス」だそうです。 寒そうだけど、行ってみたくなりました。 ______________________________________________________________
by mobulamobular
| 2010-06-26 05:10
| 魚
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