「偽」ササウシノシタ
日本にもたくさんいます。「ニセ×××」と呼ばれている魚の話です。
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学名 Microchirus azevia、 英名 Bastard sole、 ポルトガル名 Azevia、 和名はありません。
上記学名はFishes of the North-eastern Atlantic and the Mediterranean(FNAM)の記述どおりですが、
FishBase等では"Microchirus theophila"となっています。どうしてこういうことになっているのかは分かりませんが、
両者は「同一種」です。
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これまでに登場したササウシノシタ科(Soleidae)とは比較的簡単に見分けることができます。
まず、側線が眼と鰓蓋間上部で鋭角に折れ、S字を描いています。他の種ではこの角度が鈍角です。
また、無眼側の背鰭、尻鰭、尾鰭に「青色と黄色」の配色が認められます。(注:鮮度落ちした個体では識別は
難しいと思われます。)
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他の種に比べ、尾鰭が大きく、背鰭・尻鰭とは完全に離れているのも特徴のひとつです。
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このように他種とはいろいろな点で異なり、明らかに"Microchirus azevia"なのですが、何故か英名では
「ニセササウシノシタ」と呼ばれています。"Bastard"とは「雑種」「偽物」などあまりよい意味では用いられず、
相手を罵倒する言葉としても使われています。インパクトとしては「ニセ」よりもずいぶんと強い印象を受けます。
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英国人の考えていることはよく分かりません。日本人にとっては「当たり前」のヒラメ(Paralichthys olivaceus)も
英国人にとっては「ニセ・ハリバット」(Bastard halibut)となります。彼らにとってはハリバット(オヒョウ)
(Hippoglossus hippoglossus)が「当たり前」で、ヒラメは「偽物」ということになります。しかもヒラメはヒラメ科
(Paralichthyidae)ですので左向きですが、オヒョウはカレイ科(Pleuronectidae)の魚ですので右向きです。
大きさもぜんぜん違います。なのに「われわれの方が本物」と言い張ります。
とか言っても、"メジナモドキ"というのがいました。これは当然日本人がつけた名前です。
やはり、どこでも「おらが村が一番」なのでしょうか。
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ところで、現地ではこの種に関して困った問題があります。上の写真の個体も"Microchirus azevia"です。
冒頭の写真のものと「色」以外は何も変わりませんが、これらがまとまって漁獲されるのです。
よく観察すると「同一種」であることが分かりますが、パッと見、異なります。ですから、市場では違う種として
扱われています。ポルトガル名は前者を"azevia"、後者を"malacueco"と呼んでいます。
この種に限らず、ポルトガル名には別名、俗名、地方名など数多く存在します。極端な例としては
20kmしか離れていない隣村ですら名前が異なる場合もあるほどですので、今回に関しては「アルガルベの
オリャオ」においての話と、限定します。
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"malacueco"(マラクェッコ)ですが、地元の人間にとっては「ニセササウシノシタ」以外に、祭りの屋台などで
よく売っている小麦粉と卵を練り混ぜて揚げた後に砂糖をたっぷりまぶした「ドーナッツ・モドキ」のことも
やはり「マラクェッコ」と呼んでいます。昔は街中で売り歩く人の姿もよく見かけたそうです。
「魚」が先か、「ドーナッツ」が先かはどちらでもよいのですが、甘いもの好きのポルトガル人にとっては
"malacueco"と名のついた「ニセササウシノシタ」の方が「美味しそう」に見えるらしく、常に高値です。
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by mobulamobular | 2008-04-02 00:38 | | Comments(0)
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