1972年
いろいろ想い出のある年と思います。
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写真は1972年に終焉を迎えた最後の定置網の張り立て図です。大敷網の様でもありますが、身網には運動場(囲網部)を有し、羽口があります。登り網はありません。袖網とも思えるものから延長して道網(垣網)になりますが、幾重もの返し部があるのが特徴的です。羽口(端口)は左右にあり、障子網は上部をすぼめる三角形型になっています。全体的なスケールですが、写真左上に位置する沖道網(QUARTEL)の全長が2100mほど、写真中央から下に伸びる道網(RAVEIRA)が2600mほど、身網は全長300mほどだったと思います。水深も40-50mはあったと思われます。このスケールおよびタイプはこれに限ったことではなく、スペインの定置網をはじめとする「地中海式定置網」のオーソドックスなものです。

これにも、いろいろな理由があるのでしょう。















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この2年後の1974年には、あの「サラザール体制」が終焉を迎えます。
20世紀に入ると国民は王政を見限り、反乱をおこした結果、共和制が樹立されました。これにより、スイス、フランスに次いでヨーロッパでは当時3番目の共和国となり、ポルトガルの「王様の時代」はあっけなく終焉しました(ちなみに王様はイギリスに亡命してしまったそうです。)。と同時に「政治の時代」の幕開けとなったようです。共和党が戦闘的共和主義左派と保守的共和主義右派に別れ、またそれらが分裂し、新たな政党を立ち上げ、また別れたり、くっついたりを繰り返す、「今」と変わらぬ権力や主導権争いに明け暮れることになりました。そして登場したのがサラザールだったのです。

1936年サラザールはポルトガルの首相・蔵相・陸軍大臣・海軍大臣・外務大臣を兼務する「独裁」をスタートされました。その後、1968年に首相を引退するまでこの長期政権は維持されるのですが、この間の安定と長期化は、当時半数以上の労働人口を占める農村優位の社会において、農村地主の利益保護を最優先にしたことと、いわゆる「中間的社会集団」(今の中小企業や中低所得者層)からの”中立、あるいは消極的支持”を取り付けることを政策課題としていたことによるものだそうです。工業発展についてはまったくなかった訳でもないでしょうが、あまり興味はなかったようです。

しかし、ここでもまた大航海時代同様の「制度的問題」あったようです。当時、農民全体の0.4%の地主が、実に半数近い面積の農地を所有していたそうで、その他大勢は1ヘクタール以下のとうてい農業だけでは家族を養えない小規模農家だったそうです。そしてこの少数の大規模地主は、自らは農業をせず都会に住み、農場管理人を低賃金で雇い働かせ、得た富の多くは浪費に回され、子供を大学に行かせ、医者、弁護士、職業軍人にさせるなどに使われ、農業に対する再投資などは行われなかった様子です。他方、小規模農家もわずかな土地を手放すことはせず、半チャン農業で何とかやり繰りすることで、この農村構造の維持に手を貸す結果となっていたのです。つまり、この多くの小規模農家の「諦めのメンタリティー」が、長~く(今も?!)ポルトガル社会における支配的なメンタリティーとなっているようで、これもサラザールの長期体制を下支えしていたものと考えられています。また、この少数の大規模大富豪地主らは、企業家精神が全く欠如していたので、経営の能率化を怠ったことから、このことが結局はポルトガルの近代化を阻んでしまった(あるいは、遅らせてしまった)と言えると思われます。

1960年、旧イギリス領、旧フランス領のアフリカの植民地が相次いで独立するのですが、サラザールはポルトガル領のアフリカ植民地(アンゴラ、モザンビーク、ギニア・ビサウ、カーボ・ヴェルデなど)を手放そうとはしませんでした。これは、「政治的に植民地の独立を認めても経済的には依然として繋ぎ止めておくことのできるイギリスやフランスとは異なり、ポルトガルはいったん独立を認めると、それを引き止めておく経済力がなかった」ためだそうです。自業自得といってしまえばそれまでですが、アフリカ植民地から吸い取れるだけとっておいて、得た富はパーっと使ってしまい、将来の糧として利用できなかった(しなかった)ことが最大の理由です。しかしポルトガルが植民地の独立を認めなかったことで、後に体制の崩壊の原因となるアフリカ植民地戦争が激化し、泥沼化するのでした。

そしてついに、ポルトガルはその時を迎えます。1974年4月25日、軍事クーデターにより48年間続いた独裁政治が終焉となったのです。
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by mobulamobular | 2012-04-15 06:28 | 定置網 | Comments(0)
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