養殖魚
「世界の水産資源の保護と管理 (Conservação e gestão dos recursos marinhos mundiais)」には、まずその全体量を把握する必要がありますが、"見えないもの"を相手にするため、しばしばややこしい課題として関係者の前に立ちはだかります。
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ポルトガルの科学雑誌に、アルガルベ定置網で数年にわたりコルビナ(Argyrosomus regius)の資源調査を行っていたリスボン大学の博士課程の学生のレポートが掲載されました。彼の名前は"Nuno"(仮称)といいます。こうした調査に漁師の協力は不可欠です。ですから、彼が初めて調査依頼に訪れた時、まずは"漁師と仲良くなる"ことを勧めました。あとは、"漁師のためになる"調査・研究を行うことをお願いしました。彼も現場に出ることによって、今までとは違った角度から「水産資源」というものを見ることができたと思われます。

さて、コルビナについてもうひとつ、おとなりスペインからのニュースです。
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養殖コルビナ、です。結論からいうと、"売れていない"様子です。最近はボチボチですが、かつてはアルガルベ定置網からかなりの数のコルビナを親魚としてスペインやフランスの養殖業者さんに活魚販売しました。その後、彼らの努力の甲斐あって養殖コルビナが市場に出回るようになり、ポルトガルでもスーパーなどでふつうに見る「養殖魚」として定着しつつあったのですが、最近になって見ないな、と思っていたらこのニュースです。理由はコルビナという魚が"広く知られていないため"だそうです。確かにそれも売れない理由のひとつだとは思いますが、問題は他にもあるようです。

コルビナという魚は50kg以上にもなる大型魚ですが、とても成長の遅い魚なのです。当然個体差はありますが、全般的には1kg育つのに1年かかることがNunoの耳石による年齢査定調査などで明らかになっています。(ですから、30kgのコルビナはおおよそ30歳ということになります。) 養殖魚は、その魚を養殖し販売して最終的にペイできなければ何の意味もありません。しかし、コルビナの場合、その成長の遅さゆえ、最短でも数年の養殖が必要になります。ですから、養殖経費がかさみます。それでも、もともとが大きな魚ですから、小さな個体では身質は異なりよって味も異なります。つまり、消費者側から見れば、"高い割りには味は期待外れ"、ということになっているのではないかと"勝手に"想像しています。

"人気種"を養殖の対象魚種とすることは養殖の大原則でしょうが、"成長が早い"ことが事業としてとても大切なファクターであることも事実です。今後、彼らのさらなる研究により難局を打開していくことを期待しています。



最後に、「養殖魚」について、基本的なポイントをおさえておこうと思います。なぜならば、市場において「養殖魚」の定義が混乱しているように思えるからです。ひと口に「養殖魚」といってもいろいろな形態のものがあります。しかし、これはあくまでも"私見"です。なにせもう大昔の知識を元にしていますので。

上記の養殖コルビナは、「増殖魚」のカテゴリーに入ります。養殖場で親魚を用いて種苗(稚魚)生産から行っています。日本の養殖マダイや養殖ヒラメと同様です。また、ヨーロッパではSparus aurataDicentrarchus labraxの養殖が同様に種苗生産から盛んに行われています。ですからすべてが人為的に行われた結果の魚です。そして親魚も「増殖魚」であった場合、これを"ちまた"では完全養殖と呼んでいますが、これは「完全増殖魚」となります。

次に、"ようまん"と呼ばれる養殖ウナギのようなパターンが「養殖魚」のカテゴリーになります。ハマチ(養殖ブリ)や"日本で行われている"マグロも同様です。つまり、稚魚は人為的に行われた種苗生産によってではなく、"天然"の稚魚を捕獲して育てています。これが本来の「養殖魚」です。

もうひとつは「畜養魚」というカテゴリーになります。これも「養殖魚」同様、元となる魚は"天然"ものになります。じゃ、何が「養殖魚」との違いかというと、いろいろあると思いますが決定的な違いは元となる魚(あるいは稚魚)にすでにある程度の商品価値があるかないか、だと思っています。「畜養魚」の元となる魚はすでに稚魚ではなく商品価値がある成魚なので、育てるというのではなく、もっと太らせたい(脂をのせる)とか出荷の時期を調整したいとかいうさらに付加価値を高める理由により一時的にイケス網内等に入れて必要に応じて給餌を行うことになります。もちろん「養殖魚」の天然の稚魚も養殖用としては商品価値はありますが、本来の「食品」としてとなると価値はないということです。

ざっと、こんな感じですが、もうひとつ「栽培漁業」というカテゴリーがあります。これは「増殖魚」のカテゴリーで得られた稚魚(人為的種苗生産)をある程度の大きさに育った時点で海に放つものです。ですから"収穫"は天然魚の漁獲と同様になります。日本ではマダイやアワビなどで行われていると思います。

この「養殖魚」の識別の混乱は英語表記においても見られますが、最近ではちょっとは改善されつつあるように思われます。「増殖魚カテゴリー= Aquaculture(Fishculture)」、「養殖魚カテゴリー= Fish Farming」、「畜養魚カテゴリー=Fish Fattening あるいは Capture-based aquaculture 」。

誰でもよいですから、ちゃんと決めていただければ助かります。







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by mobulamobular | 2011-05-02 03:05 | | Comments(0)
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