スペイン底曳網船
天気はよくなったのですが、再び東からの風により海は波の高い状態となっています。そんな中、スペインの底曳網船が時化を避けてオリャオの港に水揚げのため入って来た、と思ったのですが、ちょっと別の事情があったようです。
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この底曳網はオッターボート式のもので、このあたりではよく見るタイプ漁船ですが、「底曳網」とは読んで字のごとく、時に海底に網を這わせ、何から何まで根こそぎ獲ってしまう危険性をはらんでいて、「海底環境破壊」の問題を抱えているため、かなりシビアに規制のかかっている漁法です。そんな訳で、ここでは底曳網の操業は何マイル以上沖合の海域でなくてはならないとか、漁獲物は種別にその漁獲量が制限されたりしています。

ところが今回、このスペイン底曳網船はこれらの規則を破っていたことが判明。ようするに、「捕まって、オリャオに強制的に入港させられた」ということでした。違反内容は、ちょっと丘側により過ぎて操業してたのと、あらかじめ定められた漁獲量全体に対するエビの漁獲割合がオーバーしていた、ということでした。

結局、罰金と漁獲オーバー分は没収、というお裁きになったようです。で、午後のセリ場に並んだのがこれです。
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学名 Parapenaeus longirostris、 英名 Deepwater rose shrimp、 ポルトガル名 Gamba branca、 和名 ツノナガサケエビ です。
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英名(深海ピンクエビ)、ポルトガル名(白エビ)に対し、今回の和名はちょっとややこしいです。まず「ツノナガ」ですが上の写真を見れば分かるように、なるほど長い角を持っています。そして「サケ」ですが、鮭が好んで捕食するエビ、という意味ではなさそうです。どうやら、頭部側面に筋があり、そこからいかにも「裂けそう」なのでこんな和名になったようです。味の方ですが、もちろん地先の海で獲れた新鮮なエビですので、美味です。でも、定置網には入りません。

もう1種。
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学名 Micromesistius poutassou、 英名 Blue whiting、 ポルトガル名 Verdinho、 和名はないと思います。
この種は初登場ですが、ポルトガルではかなり有名な魚です。どういう風に有名かというと、「未利用資源」、「投棄魚種」として有名なのです。ちょっと水っぽかったり、小ぶりな魚で痛みが早かったりすると思いますが、タラの仲間ですので本来ならば美味しく食べれる魚なのです。事実、大量のVerdinhoが加工品の原料として世界中に出回っています。それでも未利用であったり、多くが海中に投棄されているのは、魚自体の品質の問題とは別に、大量に漁獲されることと、前述の底曳網船のルールに因るところが大きいと思われます。例えば、Verdinhoの漁獲量は全体の水揚量の何%以下、と決まっている訳ですから、それ以上は獲れても水揚げはできず、結果、海中に投棄するといった具合です。なんか、もったいない話です。

これを「もったいない」と考える人物が他にもいました。
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EUの水産大臣・Dra.Maria Damanaki です。海中投棄はもったいないので禁止にする、そうです。確かに魚資源の有効利用はこれからますます重要な課題になってきます。しかし、これを実行するには、例えば底曳網漁のルールやいろいろな法律を改正していかなくてはなりません。できるか、お手並み拝見です。でもそうなれば、この「スペイン底曳網船」も捕まらなくてもよかったのかもしれません。













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by mobulamobular | 2011-03-22 05:00 | | Comments(7)
Commented by obakappu at 2011-03-22 23:57
難しい問題ですね。
獲るな、ではなく、これしか獲るな、だと、獲り過ぎた時の対処法を考えないと、捨てることになりますね。
ワンシーズンの総量を決めるとかしないと無理でしょうか。
減っていくチケット制とかしないと、捨てますよね。

あーーもったいない。
Commented by mobulamobular at 2011-03-23 07:25
場所や漁師によります。この場合はスペイン船でしたが、はたしてこの法律がポルトガルに必要かどうか、ポルトガルの漁業に見合ったものかどうかを判断する必要があります。ここにいて見ていると、こういったトラブルの多くがEU行政の問題であり、漁師の問題ではないような気がします。
Commented by yetiherder at 2011-03-27 17:11
こんにちは。

この法律はEU諸国に適用されるようですね。ここでも底曳網でしかとれない小型の魚が隣の島からやってきて底曳網漁が問題視されている事をしりました。ギリシャでは禁止されたそうです。ここら田舎はちっこいおんぼろ漁船で獲っているだけなので問題はないですが、地中海、エーゲ海全体では漁獲量は大幅に減っているようです。
Commented by mobulamobular at 2011-03-28 04:42
yetiherderさんへ。こんにちは。ここまで技術が進歩してくると、それこそ魚を全部獲る気になれば、獲ってしまうかもしれません。だからこそ、漁業にはその基本的コンセプトが大切になってくると思います。しかし、漁業も経済活動のひとつですから、「獲ると決めたら獲る」のが至上命令と考えているのが大多数です。また、こうして得られた利潤は生産者(漁師)の生活に直結するものです。そこに規制が入るということは、「儲けるな」と言っているのと同じことです。加えて、その後に複雑な流通システムがありますので、漁師の儲けはさらに少なくなります。もう少し正確に言うと、魚の価格は市場により決められていますので、漁師には自分で自分の労働に見合っただけの金額を受け取れない場合があるのです。(続く)
Commented by mobulamobular at 2011-03-28 04:42
yetiherderさんへ。(続き) ですから、漁師は基本的に規制には反対の立場となると思います。ただ、規制を破ると、警察に捕まっちゃうので、それがイヤで守っているだけのことです。こんな感じですから、そんな漁業に未来はないと思われます。この点、例えばノルウェーなどでは、当然、漁師の獲る魚の量も規制していますが、魚の価格(漁師が受け取る金額)にも「最低販売価格」を設け、いわば漁師の生活のことも同時に考慮しています。ですから、漁師は仕事にも生活にも余裕を持つことができています。今の大方の漁業規制や魚資源保護は、こうして漁師の生活の犠牲の上に成り立っている、とも思っています。
Commented by yetiherder at 2011-04-09 05:14
再コメです^^  ギリシャでは昔から漁師は貧しい、という価値観があります。ろくな食べ物の育つ土地を持っていないから『おそろしい』海にでて生活を稼いでいると。今でも田舎の漁師たちは決してお金持ちとはいえない生活をしています。それでも卸売りをせず直接販売しているので卸売りに比べて利益は大きいと思います。ただ、ギリシャは基本的に流通が悪いです。もし田舎の漁師が市場に卸したい、と思っても不可能なもの。アテネなどの大きな市場に並ぶ魚は輸入か養殖か、近海で捕れたものばかりで、同じ値段ならここらで取れる物のほうが遥かに質がいいと思います。

市場に卸している漁師さんたちにはとても酷な規制だと思います。おっしゃる通り、こういう規制と同時に、漁業に携わる人の「生活保護」も一緒に考えなくてはいけないのは確かです。「あれはだめだ、これはだめだ」の一方的な規制では「じゃあどうすれば」という解決策が見えてこないのも難点です。
Commented by mobulamobular at 2011-04-10 02:44
yetiherderさんへ。「漁師は貧しい」というのは、ギリシャのみならず万国共通の認識ではないでしょうか。理由は様々ですが、前述の通り、漁業規制と流通システムにあると思っています。でも解決するにはとても難しい問題です。なぜならば、この2点は漁師にはどうしようもないことだからです。ですから漁師は魚を高く売る工夫をする必要があります。「早い者勝ち」だとか「大漁だ」などという考え方はやめ、少なく獲って高く売ることを考えた方がよいと思っています。
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