混乱 - ゴマサバ
これ、「ゴマサバ」ではありません。「マサバ」と結論付けています。
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学名 Scomber japonicus、英名 Chub mackerel、ポルトガル名 Cavala、和名 マサバ です。
しかし、こんなに体表がゴマだらけのサバを以ってしても「ゴマサバ」と呼ばずんば、何を以って「ゴマサバ」とするべし、と思うほど「胡麻サバ」ですが、それでも「マサバ」です。理由は簡単で、FAOでも、FishBaseでも、FNAMでも、大西洋にはゴマサバ(Scomber australasicus)は生息しないとされているからです。ようするに、消去法です。サバ属(Scomber)には、マサバ(S.japonicus)、ゴマサバ(S.australasicus)、タイセイヨウサバ(S.scombrus)の3種が存在することになっていますので、ゴマサバでなく、タイセイヨウサバでもなければ、それは必然的にマサバになるのです。
明らかに他の2種とは異なるタイセイヨウサバは下の写真のようになります。
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学名 Scomber scombrus、英名 Atlantic mackerel 、ポルトガル名 Sarda、和名 タイセイヨウサバ(あるいは、ノルウェーサバ) です。

さて。前述のとおり、本ブログでは一番上の写真のサバを"マサバ扱い"しているのですが、これは「ポルトガルでのこと」あるいは「大西洋でのこと」となります。日本近海に生息する「マサバ」と同種とすることには疑問がありますし、実際、同じと考えるには「あの胡麻」を見てしまうと無理があるのです。

ことの真実は分かりません。ちょっと勝手に記してみます。
サバ属は3種ではなく、実は世界に4種存在します。"S.colias"という種が加わります。1789年にGmelinという人が発見・命名しています。FishBaseには載っていますが、情報としては乏しいですし、ポルトガルでは1種として認識されていません(ポルトガルの農水産省では"Cavala=S.japonicus"です。)。ですが、ものの文献では最近「ミトコンドリアDNA」レベルの話で、S.japonicusとS.coliasには異なったクレート(共通の祖先から進化した生物群)が存在することを明らかにしています。
ようするに「2種は異なる」ということなのでしょうが、内容が難しすぎて一般的ではなく、確認も困難なためあまり世間には広まっていな様子で、今なおコントラバーシャルな話題なのです。

しかし、現場に立つ者の一人として、これからはこの説を信じてみようと思っています。そして周りの人間たちにも説いてみたいと思います。例えば、水族館関係の人たちが、なんて言うかが楽しみです。
学名 Scomber colias、英名 Atlantic chub mackerel 、ポルトガル名 分かりません。 和名 タイセイヨウマサバ です。
注) 「タイセイヨウサバ」と「タイセイヨウマサバ」がいるということです。 

ついでにもう一つ、「ゴマサバではない」理由となりそうなものを記しておきます。
以前にも"サバについては神奈川県水産技術センターのWebページに詳しく記載されている"と記述したのですが、その中に「3.サバの仲間と見分け方」というのがあって。
"水産庁中央水産研究所(現独立行政法人中央水産研究所)では、誰にでもマサバとゴマサバが判別できるマニュアルを作成しました。この方法によると、少し測るだけで、ある部分の斑紋を観察するだけで簡単にサバを判別することができますのでこの方法を紹介します。
その一つの方法は尾叉長(吻端から尾鰭彎入部の内縁までの直線距離)と第1背鰭の底の長さとの比率を求めて判別する方法です。まず、サバの尾叉長を求めます。吻端から尾鰭の縁辺で最も湾入した部分までの長さを測ります。次に、第1背鰭の最も前側にある第1棘条の付け根から第9番目の棘条の付け根までの長さ(これを仮に計測基底長といいます)を測ります。この値を尾叉長で割って100を掛けます。たとえば、尾叉長250mmのサバの計測基底長が26.25mmとしますと、26.25÷250×100=10.5となります。この計算して得た値を判別指数といいます。この計算では10.5が得られた判別指数ですが、判別指数が12以上でマサバ、12未満でゴマサバと判断されます。この判別方法は99%以上の高い精度で判別できますが、やや精密に測定しなければなりませんので、ノギスによって測定する必要があります。"
とのことです。

以前に1ダースほどのサバで上記の計算を実践したことがあり、結果は次のようになりました。
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よって、計測した12尾全ての判別指数が12以上で、結果、全て「マサバ」と判別されました。

しかし、この判別結果について個人的にはちょっと残念に思っています。なぜならば、「ついに大西洋でゴマサバ発見」の方が話題性に富んでいると思ったからです。FishBase等の記述ではゴマサバ(S.australasicus)は、北インド洋から紅海まで生息している、となっています。ならば、何故、スエズ運河を越えて地中海、大西洋までやって来ないのでしょうか。こっちの方が、不思議なような気がしています。

地中海・大西洋にバカンスにお出かけの際は、「ゴマサバ探し」やってみませんか。

ps. ノギスもお忘れないように。
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by mobulamobular | 2010-04-25 06:00 | | Comments(4)
Commented by リモ子 at 2010-04-26 04:45 x
mobulamobular様、今回の記事で私の中で完全に整理がつきました!本当にありがとうございます。店で使いたかった方のサバは『タイセイヨウサバ』、Sardaの方でした!あー長年のモヤモヤが吹き飛んですっきりです。それにしても1つの魚にしてもこれだけ種類に議論の余地があるんですね。判別もなかなか難しいとは・・・まだまだポルトガルの魚で日本では何に当たるか分からないものが多いのですがこれからも参考にさせていただきます、ありがとうございました!
Commented by mobulamobular at 2010-04-27 09:18
リモ子さんへ。役に立ってよかったです。
Commented by 相模湾 at 2010-04-29 11:30 x
以前、アルゼンチンのサバを輸入したいので見てほしいと依頼がありました。私も大西洋にはマサバとタイセイヨウサバしかいないと思っていたので、マサバだろうと見たところ、ゴマ模様がある。「パタゴニア海域の重要水族」を見るとマサバらしい写真が出ていましたが「多くの地方種族があるらしく、さらに深い研究が期待されている」とありました。そしてFAOの「The living marine resources of the Western Central Atlantic」に上記のようにマサバとは別種である旨が記載されていました。私も、早く、広く知られるようになることを望みます。
Commented by mobulamobular at 2010-05-01 07:00
相模湾さんへ。コメントありがとうございます。「もう1種」の存在を気にしている人は意外と多いのかもしれません。「サバの研究」が進むことを期待したいですね。
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