ムール貝
定置網の漁師たちはおおよそ1か月の休みを終え、作業を再開しています。
ここでは漁期終了後、網は抜きますがフレーム(側張り)は海に残します。ですから、休み中も最低でも週一の割合で沖の状況をチェックしに出かけます。問題がなければ、やはり一安心です。
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そんな時に持って帰ってきた、定置網の浮子の下にいた付着生物です。
学名 Mytilus galloprovincialis、 英名 Mediterranean Mussel、 ポルトガル名 Mexilhão、 和名 ムラサキイガイ、またはムール貝です。
それを開いて中を見てみました。すると、ありました。もうかなりの量の卵です。写真の上部になります。
私見ですが、ここのムラサキイガイは成長が早いです。日本の2倍ほどのスピードで大きくなるのではないかと考えています。これからの春先に産卵し受精します。卵は浮遊卵で、潮に流され漂います。孵化した後はトロコフォア幼生、べりジャー幼生と変態します。この間は繊毛を使って水中を遊泳します。その後、殻長が0.25mmほどになった時、ペディベリジャー幼生(付着期幼生)に変態し、網やロープに付着します。それが4~5月ごろと思われます。この時、まだ付着したムール貝は小さすぎて目で確認することはできませんが、これが6月末~7月始めころ米粒大にまで成長すると、目で見ることができるようになります。ここからが早いです。放っておくと見る見るうちに成長し、10月~11月には殻長は4~5cmに達し、年明けには7~8cmの大きさにまでなってしまいます。

もう1種いると思われます。学名 Mytilus edulis、 英名 Common Mussel、 ポルトガル名  Mexilhão、 和名 ヨーロッパイガイ。
この種は基本的にはもっと北方に生息しているとなっていますが、昨今のグローバル時代にはどこに生息していてもおかしくありません。文献によるとヨーロッパイガイの産卵期は、ムラサキイガイが春先であるのに対し、夏から秋にかけてとなっています。現に定置網を見てみますと、今の時期にも探すと1~2cmの個体を見つけることができます。これが春先に産卵したムラサキイガイの子孫であるとすればずいぶんと成長が遅いことになりますので、別種であると考えています。しかし、いろいろな文献に目をとおしてみると、双方のイガイとも「多くの個体で年間を通じ産卵可能のコンディションであることが分かっているが、…」という条件が付いています。要するに、ムラサキイガイであれ、ヨーロッパイガイであれ、年中産卵する可能性があるということです。
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何れにせよ、これが7月に大量に網に付着していることが確認されたら、さっさと網の交換作業を行うのがベターです。無理をするとあっという間に網をもってかれます(ムール貝の重さで網が沈んでしまう、ということです)。そうすると漁ができなくなります。また、ムール貝がベッタリ付着した網を引き揚げる作業は、ヘタをすると2次災害の可能性が出てきます。
ムール貝はグルメの間では人気の食材ですので、いろいろなところで養殖も行われています。ここアルガルベでもムール貝の養殖プロジェクトの話が進んでいます。どんな事業も同様ですが、実際やるとなるとそれなりの困難が伴います。前述のとおり、ここのムール貝は成長が早いのですが、養殖となると放ったらかしにはできず、世話が必要です。要はそれができるかどうかです。
ムール貝は定置網のみならず、真珠やカキ養殖にも時に多大な被害を与えます。また、海水を利用している発電所、海に設置してある各種観測機器や船の航海に必要な標識灯などにも被害が及びます。
ヨーロッパ発、世界最強の汚損生物の1種です。









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by mobulamobular | 2010-01-26 00:55 | 定置網 | Comments(2)
Commented by 新米漁師 at 2010-01-26 22:56 x
こちらも、もう少しで網入れです。
今年、相模湾ではムラサキ貝の付着は非常に少なく、網の洗浄も楽に済みました。
Commented by mobulamobular at 2010-01-30 17:52
新米漁師さんへ。網入れ頑張ってください。今年の大漁を祈願します。
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