「第2のクジラ」
誕生間近、なのでしょうか。
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ポルトガルの新聞にも同様の内容の記事が出ていました。
日本政府は「クロマグロは数千万の単位で卵を産むのだから絶滅なんてありえない」と言っています。他方は「違反操業も含めクロマグロを獲り過ぎているので数が激減している。このままでは3~5年以内に絶滅する」と言っています。しかし、何れも事の真実は分かりません。
やはり、やり過ぎたのでしょう。目立ち過ぎたのです。「マグロ・ビジネス」とかの失敗です。派手にやり過ぎて環境保護団体の格好の餌食になったのではないかと思います。何ごとも控えめが肝要ですか。でも、ひとつのビジネスが終焉を迎えても彼らには「次」があります。なんかズルイです。
マスクの向こう側のキミ。君は職を失うのでしょうか。




この間、いろいろなメディアによる「大西洋クロマグロ」の報道を見ました。
しかし、残念なことに、どれも的を得た説明がなされているとは思えませんでした。
問題となっているのは「大西洋クロマグロの資源」です。しかし、西大西洋群系、東大西洋群系、地中海群系と分けて考えられれている大西洋クロマグロの内、今回問題になっているのは東大西洋群系、地中海群系の2つ系群の資源についてです。
そして、この問題の原因となっているのが「地中海内での巻き網船による大量漁獲」です。では、何故、地中海内で巻き網船による大西洋クロマグロの大量漁獲が行われているかと言うと、「養殖マグロ場」に売るためです。
ここではあえて「養殖マグロ」という言葉を使いましたが、以前はこれを「蓄養マグロ」と呼んでいました。「養殖」と「蓄養」の違いについてははっきりしないのですが、個人的には「魚をイケス内に入れておく期間」が長いものを「養殖」、比較的短いものを「蓄養」として区別するものと考えています。
商業ベースの「蓄養マグロ」の発祥の地はカナダとも聞いています。もちろん行ったのは日本人のグループです。おおよそ35年ほど前のことです。地元の定置網で獲れるマグロをどうにかしてうまく日本まで送れないかと考えたのが、事の始まりのようです。しかし、定置網にはいつ魚が入ってくるか分かりません。日本まで送るとなるとそれなりの準備が必要ですが、いつ来るか分からない、いつ出荷するか分からないものの準備は難しく、それを何とか計画立てて出来ないものかと考えた末に思いついたのが、「マグロのイケス内での餌付け」でした。それまで誰も、あんなにデッカイ魚をイケスの中で飼った経験がなかったので、果たしてマグロはイケスの中で生きていけるのか、といったところから試行錯誤が始まったものと思われます。そして、これに成功を遂げ、イケスの中から順次魚を取り上げて計画的に出荷が出来るようになったのです。ですから、当初は「マグロをある短い期間イケス内に確保し、計画的に出荷した」ものが「蓄養マグロ」と呼ばれていたのです。そして、いつしか舞台はマグロがもっと獲れる地中海の漁場へと移って行ったのです。
地中海の「蓄養マグロ」も最初は定置網がベースでした。なぜならば、定置網以外にマグロを生きたまま捕獲できる漁法はなかったからです。そして見事にこの事業は成功しました。
東大西洋群系のマグロは4~5月に産卵のために地中海に集まって来ます。これを「入りマグロ」と呼んでいます。そして地中海内で産卵行動を終えたマグロは7~8月に再び大西洋に戻って行きます。これを「出マグロ」と呼んでいます。定置網ではこの双方のマグロを漁獲しますが、「入りマグロ」はそのまま「空飛ぶマグロ」として日本等に出荷されていました。また、漁獲が多い場合は日本から買い付けに来た冷凍船にその場で売り渡していました。一方、「出マグロ」は産卵行動を終えたばかりで雄雌ともに体力を使い果たし、げっそりとやせ細ってしまい、身は「コンニャク」のような状態でそのままでは商品価値はありません。そこで、漁獲した「出マグロ」をイケスに移し、2~3か月の間、給餌を行い太らせてから、計画的に天然マグロの品薄時期で暮れの一年で最も消費が伸びる時期に日本に向け出荷されていたものが「蓄養マグロ」だったのです。

しかし、この「蓄養マグロ」を見て、もっとこんなマグロができないかを考え始めた人たちがいました。さらにそんな時、とても有効な手段が出てきました。それが曳航可能なイケス網でした。「曳航イケス」とは文字通り活きたマグロをイケス内に入れたまま曳航して目的地まで移動できるものです。これにより遥か彼方の沖で大型の巻き網船によって漁獲されたマグロを海岸近くの養殖イケス場まで運んでくることが可能になったのです。この方法は見る見るうちに地中海内に広まり、多くのグループがこの事業に参入してきました。その結末が「今」となる訳ですが、大型の巻き網船が飛行機によって上空から見つけたマグロの群れを一網打尽にするのですから、とてつもない数となります。そこには前述のような産卵前(入りマグロ)、産卵後(出マグロ)の区別はなく、また、地中海群系の比較的小型のマグロ(100kg以下で地中海内で生まれた後、しばらくの間は大西洋には出ず、地中海内に留まっていると考えられている群)までも無差別に獲ってしまいます。通常、巻き網船のオーナーと養殖場のオーナーは異なり、マグロの受け渡し(取り引き)は沖で行われますので、正確な漁獲数の把握は非常に難しく、また、ICCATで定められた漁獲量も数年間にわたり繰り越しが可能であることから、最終的には養殖イケス場からの取り上げの際に数合わせができるので、事実、ICCATの漁獲規制は有名無実化していました。
これにより、年間を通じ、マグロがイケス内にいない時期がなくなりました。長いものでは1年以上イケス内にいるマグロもいます。ですから、これは「蓄養マグロ」ではなく、基本的な肉質まで人工的に変容した「養殖マグロ」なのです。悪い言い方ですが、業界内では「蓄養マグロはサバ臭い」という風評があります。過去の記事「日本人、アルガルベのサバを喰らう」を参照ください。

前述の日本政府の見解も生物学的には正論でしょうが、「大西洋クロマグロ資源」の現状とはマッチしていないと思います。事実を承知しておきながら、事実を公にしようとしない意図があるのではないかとあらぬ誤解を招かないような対処が必要です。上記の「養殖マグロ」事業には日本および日本人が深く深く関与していることは明らかです。問題点を明らかにし、問題解決に向けて地中海およびその近辺でもともとマグロと深い関係にある人々に迷惑がかからないように最大限の努力をしてもらいたいと思います。

これで、この先何年間もマグロの供給を高値安定でコントロールできると考えていたのでしょうが、経済危機と今回の問題ですべての計画は吹っ飛んだようです。世界的な健康志向から日本食ブームとなって、すし・刺身が流行り、その主役であるクロマグロがレストランのメニューから消えつつあります。今後の動向が注目されますが、やはり「第2のクジラ」になることだけは避けたいです。
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by mobulamobular | 2009-09-20 21:20 | マグロ | Comments(0)
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