"<クロマグロ>国際取引の禁止を ワシントン条約提案へ"という報道について
ここに来る前、"<クロマグロ>国際取引の禁止を ワシントン条約提案へ"というexciteニュースを見ました。"大西洋(地中海を含む)クロマグロを、絶滅の恐れがある野生生物を保護するワシントン条約の対象に加え、国際取引を全面的に禁止する動きが浮上している。"そうです。この提案は"2010年3月13~25日にカタールの首都ドーハで開かれる同条約締約国会議に向けモナコが提案し、英仏独、オランダなど欧州諸国が賛意を示している。"そうです。
一方、米国は"太平洋の個体群も含めたクロマグロすべての国際取引を禁止する"提案を同上会議に出すことを検討しているそうです。
ワシントン条約(CITES:Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)ですので、クロマグロ漁が禁止になるのではありません。例えば、「日本にはクロマグロは輸入されなくなる」という話です。日本に来る海外からのクロマグロが途絶えれば、これは「日本ではもうクロマグロは食べられない」に等しい状況になると思われます。ですからこれは大変な問題です。しかし、もっと大変なことになると思われるのが、地中海海域でクロマグロの仕事に携わっている人たちです。彼らにとってクロマグロを日本に売れなくなることは、クロマグロを缶詰屋さんにしか売れなくなることに等しい状況となるからです。
いつだったか「クロマグロの漁獲割当量違反トップ国はイタリア、スペイン、フランス、日本」という記事を見た憶えがあります。ことの真実は知りませんが、こういうことを書きたてられること自体に日本は自嘲しなければなりません。だからこそ、ICCATの会議では率先して「漁獲量50%削減」を打ち出したのですが、押しの弱さで、世界には受け入れてもらえませんでした。もしワシントン条約でクロマグロの国際取引全面禁止が可決されれば、「時すでに遅し」となり、ついに「第2のクジラ」の誕生です。
上記違反国で個人的に一番気になるのがフランスです。この10年ほど地中海で養殖マグロ事業が盛んに行なわれるようになる中、フランスは自国でのマグロ養殖を許可しませんでした。しかし、沖でのマグロ漁はどんどんやらせ、それらを近隣諸国のマグロ養殖場に売り渡しました。これらはすべて「沖」での話です。フランスの港に帰港するマグロ船にマグロの姿はなく、それを見たその筋の人たちには「フランス船は問題なし」と思えたことでしょうが、実は違反国トップスリーに入っていたのです。それが今度はクロマグロの国際取引全面禁止の提案に早々に賛意を示しています。大国の考え方というか、これは経済ニュースではなく、まさに「びっくり」ニュースです。
EU内での取り引きは「国際取引ではない」とか言うのかもしれません。EUに入りたくても未だ入れないで、かつ、クロマグロ養殖事業を盛んに行なっているクロアチアとかトルコとかも大変です。EU諸国に囲まれているにもかかわらず、EUには属していないスイスはいわゆる「海なし国」ですから、これからは「永世中立国」に加え「永久にマグロが食べれない国」と呼ばれるようになるかもしれません。
経済不況の中、なんかいろいろな人間やグループの思惑が見え隠れしています。「世知辛い世の中」です。
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ポルトガルはEUの一員です。
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by mobulamobular | 2009-08-12 00:28 | マグロ | Comments(6)
Commented by chie at 2009-12-01 03:16 x
違反トップ国(何とイタリアらしい!)と、我祖国の捕鮪船は、洋上で缶詰と、さしみ用の極上部位を物々交換すると聞いていますが、その場合はどうなってしまうのでしょうね?
Commented by mobulamobular at 2009-12-02 02:03
chieさんへ。コメントありがとうございます。イタリアは昔から缶詰業が盛んなところという印象があります。違反トップ国と言ってもイタリアの場合、「刺身用マグロ」ではなく、缶詰用として漁獲されている比較的小さなマグロも多く含まれているのではないかと思います。この漁は昔から行われているいわば伝統漁業で、これが最近始まった日本向け刺身用マグロ漁業と一緒にされ規制に引っかかっているのではないかとも思います。ですから、伝統漁業を営んでいる漁師らは加害者ではなく、被害者であると言えるかもしれません。「さしみ用の極上部位」とは「ハラモ」と呼ばれる大トロの箇所です。これは缶詰には不向きですので、イタリア人は興味ありませんので、昔は捨てていたかもしれません。そのハラモを前にしてヨダレを垂らさんばかりの日本人にわたすことは、「缶詰好きのイタリア人」として考えると、ごく自然な洋上物々交換になるのでしょう。イタリアと日本ですので国際取引です。バレないようにするべき、と思いますが、すでにバレバレですね。
Commented by chie at 2009-12-04 06:54 x
興味深いおはなし、ありがとうございます。イタリアが缶詰業が盛んな国だとは・・・コートダジュールでシーチキンのサラダばっかり食わせる訳も解りました!?   鮪漁は確かにシチリアの伝統漁業で、海辺の鮪の処理場や、鮪御殿の建つ集落が今や寂れた観光地になっています。シチリアは法治国家とは言いがたい土地のようで、国際条約が成立したとしても、どれだけ威力を発するか疑問です。  ”政治のゲーム”に農業、漁業を営む人々の生活が左右される類のニュースには嫌悪感を覚えます。それと祖国の政治家の国際感覚、外交手腕の乏しさも・・?
Commented by mobulamobular at 2009-12-05 10:41
chieさんへ。未だ行ったことはないのですが、シチリアには伝統漁業として定置網がある(あった)そうです。アルガルベ同様、定置網があって大きなマグロが獲れて、塩田があって缶詰工場がある、そんな風景が連想出来ます。その土地の伝統や文化を壊すようなルールになってはいけませんね。政治家はその言動にパフォーマンス的意味合いがあるので許せる部分もあると思いますが、役人はマジですよ。コートダジュールも面白そうなところですね。
Commented by chie at 2009-12-11 19:46 x
刺激を受けて、シチリアのマグロ漁の歴史 のお勉強?を始めましたが、漁業の基本的な知識が皆無で、苦戦中です。定置網というのは、最近見直された、環境問題を配慮した漁業で、日本はその先進国なのですか?・・・シチリアにはTONNARAと呼ばれる海辺の施設(定置網漁の根拠地だった?)が大小様々、あちこちに残っています。絶景です。コートダジュールとモナコは・・・超高級?観光地で私の”海のイメージ”(視覚と味覚)に反する所でした。ALGARVEもFAROから西は凄いトコロだ”とガイドブックに書いてあったのですが、
このブログのSAGRESの写真から想像すると・・・シーズンオフは素晴しい海岸で、美味しい魚が一杯 ですよね?
Commented by mobulamobular at 2009-12-12 04:57
chieさんへ。そうなんですか。それでは昔のALGARVEと酷似ですね。ここではマグロの漁期に街ごと海辺に移動してきたと聞いています。しかし、残念なことにそれらの施設は今ではほとんど残っていません。
日本の定置網の歴史も400年とか500年とか言われています。ヨーロッパの定置網もほぼ同じくらいの歴史があるそうです。それ以外にはカナダ、中南米、チュニジアやモロッコ、それに台湾などで定置網漁業は行なわれていると聞いています。技術的には日本が最先進国です。「待ちの漁業」だと一時期は勇ましい漁師らに軽視された時代もありましたが、最近ではchieさんのコメントの通り、環境にやさしく、決して乱獲をしない(コントロールのできる)漁業として発展を続けています。そんな定置網が日本には何百と存在しています。
長い歴史のある定置網ですが、これからの漁業(未来の漁業の基盤)にもなると思います。しかし、昨今の漁業、特に沿岸漁業を取り巻く環境は、陸上からの新たな「文化」の侵攻により日に日に難しくなっているのが実情です。ですから、今後どれだけ既存の定置網が踏ん張れるか、だと思っています。
おっしゃるとおり、シーズンオフの海岸はよいですね。
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